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赤い崖の女:山崎洋子

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赤い崖の女:山崎洋子

この本は、小説家の山崎洋子さんが、横浜の開港時代を舞台とした小説である。

「漁村の本牧にペリーが現れた頃から、横浜遊郭時代を経て元町が発展し始めた頃の横浜開港時代を事実に沿って教えてくれる!」
フィクションでありながら、実に歴史的な流れを緻密な調査によって再現されており、かつ主人公の「希沙(きさ)」が横浜の開港時代を力強く生き抜く姿が書かれていて勇気をもらえる作品です。

本当に、山崎洋子さんの作品は、歴史的背景が緻密に書かれており、いつも感動します。

以前に、このブログで「横浜秘色歌留多」を紹介しましたが、その作品は本牧のチャブ屋が舞台となっており「谷崎潤一郎」の生活を事実と思わせるほどリアリティ豊かに想像させて頂きましたが、今回の「赤い崖の女」は、横浜開港の時代に生き抜く一人の女性を主人公にして更に大きな舞台で、これまた当時の様子をリアリティに想像させられ、長編小説(絵巻)でありながら一気に読み終えてしまいます。

しかし!

しかしなんです。山崎洋子さんの書籍は、各所にリアルな情報が仕込まれていて(私は「罠」と言ってますが)その情報を自分で調べたくなってしまうんです。逆に、気づかないで読み終えると、それまでなんですが、本来の魅力の50%で終えた感があり、非常にもったいないのです。

あまり、書きすぎるとネタバレになってしまいますので、遠慮がちに私なりに勝手に解釈した内容と感想を読んでいただいて、その上で100%楽しんでもらい、更にご自身で色々と調べてみると150%にも200%にもなり、無限に楽しめる作品です。

そこが、山崎洋子さんワールドの神髄なのです!

では、本書と合わせて参考資料として楽しんでいただければ幸いです。

【本牧関連】

それは季沙(きさ)が7歳の時だった。嘉永七年(1854)一月十七日。

から、この本は始まります。なぜ、1月17日とまで日付を明記しているのか?

沖合いの黒い船団だ。数日前には一隻だったのが、いまは七隻になっている。
サスケハナ、ポウハタン、ミシシッピー、マセドニアン、バンダリア、レキシントン、サザンプトン。

この冒頭だけでも、かなりリアルな情報と想像が膨らみます。調べてみますと、嘉永7年1月14日に輸送艦「サザンプトン」(帆船)が現れ、1月16日までに旗艦「サスケハナ」、「ミシシッピー」、「ポウハタン」 (以上、蒸気外輪フリゲート)、「マセドニアン」、「バンダリア」(以上、帆走スループ)、「レキシントン」(帆走補給艦)の6隻が到着し、本書の1月17日には、合計7隻の黒船が来ています。

本牧の名が歴史の中に登場してくるのは十三世紀である。

上記の文に続けて、本牧の成り立ちが詳しく書かれており、事実の通りにリアルに書かれています。

参考「本牧の行政の歴史」

更に、本牧の当時の漁業に関する状況や、お馬流し等の時代背景も詳しく書かれています。

黒船の乗組員達は、ポルトガル語でバッテイラと呼ぶ小舟を下し、あたりを堂々と測量している。八王子山の台場下まで漕ぎ寄せ、なにやらアメリカの文字や数字らしきものを白い塗料で書きつけていた。

1854年(安政元年)3月アメリカ海軍総官のマーサ・カルヴィレス・ペリーと幕府のあいだで日米和親条約(神奈川条約)が結ばれた。この間に、八王子鼻の崖に文字を残したのは、有名は話である。

参考「横浜遊郭」 (八王子鼻とバッテイラの画像あり)

さて、目次にある「マンダリン・ブラフ」が重要ですが、それは本書を読んで、お楽しみください。

但し、その「マンダリン・ブラフ」の場所を、勘違いしている方が多いです。現に、ネットで画像を検索してみると本牧市民公園の崖の写真が多数出てきます。実際には、本牧十二天社(旧本牧神社)の崖です。その位置を以下で説明します。(クリックで拡大)
本牧の鼻説明図

▽十二天の崖(マンダリンブラフ)写真:本牧神社
十二天

参考「本牧十二天の丘は保全」 (現在の本牧十二天について明細あり)

【横浜遊郭関連】

横浜遊郭の当時の様子や豚屋の火事、マリアルス号事件や、チョンキナ節等の時代背景も詳しく書かれています。

港崎遊郭の岩亀楼の遊女「喜遊(きゆう)」が、ラシャメンにさせられるのを拒否して自害する話は「ふるあめりかに袖はぬらさじ」で有名ですが、その喜遊の本名は・・・

なんと!

「喜佐子(きさこ)」なのです。そう、主人公の「季沙(きさ)」と繋がって感動しました。実在したと言われている「喜遊」も遺骨が埋められた場所が不明だったりするので実は生きていたのかも知れない。と勝手に妄想してしまいます。※やっぱり、本の書き出しから知る人ぞ知るという仕掛けがあった・・・

詳細「横浜遊郭」

【元町関連】

横浜元町発祥についても、洗濯店、洋式家具、水屋、牛肉等の生活関連から、ヘボン博士、メルメ・カション、サミュエル・ロビンス・ブラウン等の実在した人物が書かれていて開港時代の様子が伝わってきます。

中でも、個人的に関連があるかな?と想像した一部を紹介します。

(多少知っている「本牧」以外の地域「元町」となると私の知識不足で申し訳ありません・・・)

・ホテルの発祥
現在のレストラン「横浜かをり」山下町本店地(横浜市中区山下町70番地)に1860年2月24日に創業した「ヨコハマ・ホテル」。創設者は、オランダ人で船長をしていたC.J.フフナーゲルが船(ナッソウ号)を売却し、乗組員と共にホテルを創設した。内部に食堂、ビリヤード室、酒場を設け、数年後には、フランス人シェフのレストランや洋酒、洋菓子の売店、ボーリング室も付設した。当時、 英公使オールコック、シーボルト、画家のハイネやワーグマン、クラーク等の著名人が多数宿泊した。最後は、1866年(慶応2年)の大火で焼失してしまった。

▽ヨコハマ・ホテルの外観(写真:横浜観光情報)と広告(ノース・チャイナ・ヘラルド1860/3/10)
横浜ホテル 横浜ホテル広告

また、ヨコハマ・ホテルのバーで働いていたジャマイカ生まれの黒人(イギリス国籍)マコーリー男爵は、1862年(文久2年)、現在の横浜海員会館付近(横浜市中区山下町86番地)に「ロイヤル・ブリティッシュ・ホテル」を開業した。ホテルは、コーヒールームやボーリング場まで設備されていた。

・洋服縫製技術の発祥
東海道神奈川宿にある成佛寺といわれている。ここに住んだアメリカ人宣教師ブラウンの妻エリザベスは、持参した裁縫ミシンで日本人に縫製技術を教えたとされている。アメリカでミシンが作られはじめたのが1853年頃。
その数年後、最新式の縫製ミシンが持ち込まれ、足袋職人から転身した沢野辰五郎がブラウン夫人の助手として雇われ、日本人として最初の洋裁技術職人となった。
また、1863年(文久3年)には英国人ピアソン夫人が、居留地九七番館にドレスメーカーを開業した。今は馬車道にある洋品店「信濃屋」も、1866年(慶応2年)に弁天通りに開店した。

・キタムラ
1879年、北村与助が京都から出て、和装小物や扇子などを取り扱う店「北村商店」を弁天通りに開業した。1882年に元町三丁目で、「ハンドバック・キタムラ」で開業した。その後海外のブランドバッグなどの輸入販売をする、 当時では珍しいセレクトショップを日本で始めた。関東大震災で焼失後は神戸に移り、1945年にもとの場所(現在地)に戻った。そして1972年からはキタムラオリジナルバッグの製作と販売を展開するようになった。

・保育所の発祥
1871(明治4)年、米国婦人一致外国伝道協会から派遣された3人の女性宣教師、プライン、クロスビ一、ピアソンによって設立されたアメリカン・ミッション・ホーム「亜米利加婦人教授所」で、横浜で産まれた混血児の保護と教育を目的とした施設で母親のいない子も引き受けていた。(現在:横浜共立学園)

・修道女の発祥
1872(明治5)年、プチジャン司教からの要請に応えて、「幼きイエス会」のシスターメール・マチルド・ラクロと4名のシスターが、ヨーロッパ人宣教女として初めて来日した。その当時の横浜は、孤児や捨て子が多い時代で、到着したシスター達は、山手居留地58番に「横浜修道院」と孤児院の「仁慈堂(じんじどう)」を開設して孤児院には350人の子供と80人の乳幼児を収容した。

▽日本最初の邦人修道女達(仁慈堂にて)写真:幼きイエス会
sister

【最後に】
まだまだ、色々と深い事実の関連が果て無く埋まっていると思います。歴史の年表を見るよりも、物語(絵巻)として事実が書かれているので、開港当時の生活感や空気がリアルに伝わってきて、自分も開港当時にタイムスリップしてしまいます。

そんな、山崎洋子ワールドを、あなたも是非、体感してみてはいかがでしょうか?

「目 次」

・黒 船
・マンダリン・ブラフ
・横浜遊郭
・ドレスを縫う女
・再 会
・嫉 妬
・夢の跡

山崎洋子(2007) 『赤い崖の女』 講談社

 

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